皆さんには「ふるさと」と呼べる場所はありますか?
都会で生まれ育った方にとっての「ふるさと」って、いったい何なんでしょうか?
今回は、そんな疑問が浮かぶ「ふるさと(故郷・古里)」について、ふるさととは何か、その意味などを解説したいと思います。
この記事を読んで、「ふるさと」を見つけてみませんか?
「ふるさと」をテーマに次のポイントでまとめました。
- ふるさと(故郷・古里)とは?意味、役割
- ジブリで扱う故郷、東京人の故郷とは?、故郷(古里)の見つけ方
ふるさとについて興味がある方、ふるさとを見つけたい方、ぜひにご覧ください。
本稿では、上記の「1」について紹介しています。
- 「ふるさと」とは、ただの場所や土地を指すだけの言葉ではなく、心の拠り所であり、やすらぎを与えてくれるものである。
- 「ふるさと」には、空間、歴史、言葉の3つの役割・機能がある。
唱歌ふるさとの歌 ~故郷・古里とは?意味~
以下は、ふるさと(故郷・古里)の定番曲である唱歌「故郷」の歌詞です。
兎追いし かの山
小鮒釣りし かの川夢は今も めぐりて
忘れがたき 故郷如何にいます 父母
恙なしや 友がき雨に風に つけても
思い出ずる 故郷志を はたして
いつの日にか 帰らん山は青き 故郷
水は清き 故郷
※「恙なしや」は、「何事もなく無事でいるのだろうか」の意
※「雨に風につけても」は、「雨や風(辛いこと)に遭遇しても」の意
ふるさととは? ~故郷・古里とは?意味~
唱歌「故郷(ふるさと)」は、皆さん、一度は聞いたことがあると思います。
この「ふるさと」という言葉から、皆さんは何を思い浮かべますか?
唱歌の歌詞のような、山や川がある自然豊かな土地。あるいは実際に自分が生まれた土地。などなど、人によってイメージするものが異なると思います。
一般的に、「ふるさと(故郷・古里)」とは、生まれ育った土地であり、その原風景や心象風景を思い描き、懐かしさを感じる場所のことを言います。
※ 原風景は、心の奥にある幼少期の頃の風景という意味です。
※ 心象風景は、実際の風景ではなく、体験や感情によって心の中で生み出される風景という意味です。
別の言い方をすれば、「ふるさと」は、ただの場所や土地を指すだけの言葉ではなく、心に響いた過去の体験や経験をきっかけに、その時の空間や感覚を思い出し、懐かしさ・ノスタルジーを感じるものです。
さらに、ふるさとを思うことで、自己が形成され、過去に、自分がそこに存在したことを認めることができます。
ふるさとは、自分の心の拠り所であり、やすらぎを与えてくれる場所でもあるということです。
また、人は成人しても、アイデンティティは変化しつづけており、過去に、短期間住んでいた場所であっても、自己形成の一旦を担っていると考えられます。
ふるさとは、幼児期からの思い出がある生まれ育った場所に限定されず、大人になって以降、一時的に住んでいた場所でも、ふるさとと呼べる場所を見つけることができるということです。
「人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける」
【訳・解説】
紀貫之「古今集(百人一首35番)」
他人の気持ちは、分からないけれども、「ふるさと」では、梅の花がかつてと同じいい香りをただよわせている。
「ふるさととは遠きにありて思うもの、そして悲しく歌うもの」
【訳・解説】
室生犀星「小景異情」
この詩は、文人になるために故郷の金沢市から上京した犀星が、仕事がなく生活が苦しくなり、仕送りを当てに、故郷に戻った折に読んだ詩です。
故郷を捨てた身分だったため、複雑な心境を抱いている様子がわかります。
「若者たちは(略)、帰ってみれば野も山も変わらないが人は変わっていたという変化と不変化のその妙に、人生の凝縮された姿を、世界の神秘・時間の神秘を、見たのである」
三浦雅士(文芸評論家)「春の終駕」講談社
最近聞く「ふるさと」という言葉 ~故郷・古里とは?意味~
多くの人が、「ふるさと」と聞くと「ふるさと納税」を思い浮かべるのではないでしょうか。
もともと「ふるさと」という言葉が、国を挙げて頻繁に使われ始めたのは、1980年代のことで、バブル景気で地方から都市へ人口移動が多くなされたときです。
この頃は、地方からの人口流出を抑制するために、全国の市町村の地域振興を目的とした「ふるさと創生事業」が進められ、この事業により、1億円が交付された各自治体は、様々な取り組みを行いました。
そして、これ以降国において、「ふるさと」を使用した色々な施策が展開され、全国的に「ふるさと(故郷・古里)」という言葉が再認識されることとなりました。
ちなみに、1億円でどんな取り組みをしたのか、一部を紹介します。
- 『風力発電の整備』 山形県庄内町(旧立川町)
- 『ふるさと創生基金の原資』 群馬県榛東村
- 『古代蓮の里の整備』 埼玉県行田市
- 『ひまわりの丘公園の整備』 兵庫県小野市
- 『道の駅「掛合の里」の整備』 島根県雲南市(旧掛合町)
ふるさとの消滅? ~故郷・古里とは?意味~
国が、地方を活性化させ、地方から都市への人口移動を抑制する施策が進められているものの、「ふるさと(故郷・古里)」と呼べる場所は、年々減っています。
1940年代は、人口の8割が中山間離島地域に住んでいましたが、1990年代には、人口の8割が都市に住むようになり、わずか50年間で人口比率が逆転している状況です。
総務省の令和元年「過疎地域における集落の状況調査」によると、国内の集落数は6万1,511であり、前回調査時点(平成27年)の集落数6万1,860から、4年間で349集落が消滅したことがわかります。
特に北海道で大きく消滅しています。
また、全集落のうち、住民の半数以上が65歳以上である集落(いわゆる、限界集落)の割合は32.2%となっており、その数、なんと約2万集落です。
さらに、今後10年以内に消滅する可能性がある集落は、約450集落であり、いずれ消滅すると予測されている集落は約2,700集落あるとされています。
自分らが生まれ育った「ふるさと」が消滅する。こんな悲しいことはありません。
人がいなくなるだけで、家とか建物はそのまま残るから、見に行けばいいんじゃないの?と思われるかもしれませんが、人がいなければ、建物は荒れ果て、アクセスする道路も管理されず、人が通ることできなくなります。
ふるさとの役割 ~故郷・古里とは?意味~
ふるさと(故郷・古里)には、「空間」「歴史」「言葉」の3つの役割・機能があります。
以下に紹介します。
1 空間(風土)
3つの役割の中で、最もイメージしやすい役割が「空間」です。
山や川などの自然の景色は、昔から変わらず、そのまま残っているものです。
また、自然景色だけでなく、時代とともに変わっていく街の風景の中にも、よく見ると全く変わっていない昔から存在する風景というものもあります。
同じふるさとで育てば、これらの空間を共有・共感することができるでしょう。
「あの場所から見る自然の景色って絶景だよね」「あの公園って、小学生の頃の遠足場所だったよね」などの会話が聞こえてきそうです。
2 歴史
同郷の者同士であれば、土地の歴史や土地の移り変わり、さらには、ゆかりの人物など様々な記憶や思い出を共有・共感することができます。
「昔、あの場所にあの建物があったよね」「この地の有名出身者といえば、明治時代の〇〇だよね」など、こんな会話をすることができます。
3 言葉
東京の標準語とは違い、地方には独特の方言があります。
「〇〇だべ」「〇〇だがよ」「〇〇じゃけん」など、単純な言葉だけでなく、イントネーションやアクセントも、地方によって異なります。
同郷の人と会話していると、自然に、昔の方言が出たり、イントネーションが戻ったりするものです。
初対面の人から、同郷の方言で話かけられた場合、一瞬にして心の距離が近くなり、昔に戻ったような懐かしさを覚え、親しみが湧いてきます。
次項の『ジブリで扱う故郷、東京人の故郷とは?、故郷(古里)の見つけ方』は、こちらの記事です。