人間にとって、森林という存在は、無くてはならないものです。
私たちは、知らずしらずのうちに、本能的に森林とのふれあいを求めています。
最近、自然とふれあっていない方は、もしかして、ストレスを溜めていませんか?
ストレス解消のきっかけが、「森林とのふれあい」かもしれません。
そこで、今回の記事では、癒しの空間である「森林浴」について、次のポイントでまとめています。
- 森林の働き・森林の機能とは?
- 森林浴の効果、最適な頻度・場所
日常生活で森林と触れあう機会がない方、森林に興味がある方、ぜひ、読んでみてください。
本記事では、「森林浴(癒やしの空間)」のうち、森林浴の効果と、最適な頻度・場所について紹介します。
- 森林浴は、1982年に林野庁が広め、発祥地は、長野県の赤沢自然休養林。
- 森林浴は、視覚、聴覚などの身体感覚別で効果があり、医学的にも健康改善が立証されている。
- 森林とのふれあいは、月1回・年1回の頻度で、森林浴を行い、心身ともに休息することが必要。
- 森林浴のおすすめ場所は、林野庁が、全国に93箇所選定している。
森林浴とは?その背景 ~森林浴の効果~
森林浴という言葉が日本に広まったのは、1982年です。
この年に、林野庁が「森林の中には、殺菌力を持つ独特の芳香が存在し、森の中にいることが健康体をつくる」とする森林療法の概念を確立し、森林浴を提唱したのが、きっかけとなっています。
森林浴は、森の中で清浄な空気を呼吸し、適宜に運動を交えて心身の休息をはかる健康法といわれています。
また、広辞苑によれば、森林浴は「森林に入り、樹木の香気を浴び、精神的な安らぎ爽快な気分を得ること」という意味です。
次に、日本の森林浴の発祥地について紹介します。
発祥地は、長野県上松町の「赤沢自然休養林」であり、1970年に自然休養林第1号に認定され、1982年には、林野庁が初めて開催した森林浴大会の場所となっています。
「休」という字は、「人」と「木」でできており、「木」は、「人が休む場所」という意味です。
また、英語で「休息のための」は「for rest」と書き、「森林」の「forest」と似ていて、何か関係性があると感じられます。
つまり、人が休息をとるには、森林が欠かせないということです。
釈迦は、菩提樹の下で悟り開き、孔子は、今では学問の木と称される「楷の木」を好み、儒教を説いたとされています。
森は、ストレスを軽減され、リラックス状態を促します。
先人たちが、森の中で瞑想にふけたのも納得できますね!
森林浴による身体の感覚別効果 ~森林浴の効果~
視覚
人は、緑色を見ると、安らぎや癒しを感じ、リラックス状態になり、茶色を見ると、温もり、落ち着きを感じると言われています。
また、木々が風にあたると、木洩れ日が揺れます。
この揺れのリズムは「1/fゆらぎ」であり、人に心地よさを与えます。
視覚の効果は、独立行政法人森林総合研究所の研究結果※においても、森林を眺めるだけで、都市環境に比べ、交感神経の上昇が抑制され、リラックス状態になると示されています。
※独立行政法人森林総合研究所「森林浴由来の視覚・聴覚刺激がもたらす生理的影響-複合効果と全身的協関に着目して」による研究結果
聴覚
森林の中に入ると、自然の音や、生き物の鳴き声を聴くことができます。
小川のせせらぎや、鳥のさえずりなどは、先ほど紹介した「1/fゆらぎ」の音であり、心地よさや癒しを与えます。
聴覚の効果は、独立行政法人森林総合研究所の研究結果※においても、森林の中で音を聴くだけで、都市環境に比べ、交感神経の上昇の抑制や、神経活動の沈静化が図られ、リラックス状態になると示されています。
※独立行政法人森林総合研究所「森林浴由来の視覚・聴覚刺激がもたらす生理的影響-複合効果と全身的協関に着目して」による研究結果
嗅覚
嗅覚は、森林浴において最も重要な役割を果たしています。
樹木が発散する物質には、「フィトンチッド」という成分が含まれており、これが森林特有の香りのもととなっています。
このフィトンチッドには、微生物の活動を抑制する作用があり、殺菌効果や抗菌効果があります。
人体にも効果があり、フィトンチッドの濃度を上げると、ナチュラル・キラー細胞(通称:NK 細胞)の活性が促進されるという研究結果※があります。
※日本医科大学の李卿(りけい)医師執筆の「森林浴」による
触覚
森林の中では、清々しい空気に包まれ、爽快さを感じますが、これは、川や滝の周囲に存在するマイナスイオンが影響しています。
森林は、直射日光を防ぎ、外気を遮断しているため、湿潤状態となりやすく、マイナスイオンが保たれる良い環境なのです。
マイナスイオンは、空気の浄化作用があるため、人体にとってリラックス効果があり、快適で心地よい環境を作り出すことができます。
また、森林総合研究所の研究※によれば、木材に触れた時と、非木材(アルミニウムなど)に触れた時では、木材の方が非木材より、ストレス値が低いという結果がでています。
人は、木に親しみを持ち、木の温もりを肌で感じているということです。
※森林総合研究所「人間の快適性に及ぼす木材の触覚、視覚及び嗅覚刺激の効果の解明」による
森林浴による医学的な健康効果 ~森林浴の効果~
ナチュラル・キラー細胞の活性化
森林浴の効果では、まず、ナチュラル・キラー細胞(通称:NK 細胞)が活性化されることが分かっています。
NK 細胞が活性化されると、3種類の抗がんタンパク質が増加します。
- パーフォリン(Perforin)
- グランザイム(Granzyme A,B 等)
- グラニューライシ(Granulysin)
これらが増加すると、ウイルス感染やがん細胞に対する抵抗が向上します。
この効果は、30日程度持続することが分かっています。
森林浴により、身体の免疫機能が向上し、良好な健康状態を保つことができるということです。
不快感の緩和、活力の向上
都市環境と森林環境における運動(歩行)前後の気分状態の変化をみると、
森林環境の方が、緊急・不安、混乱、疲労の気分が緩和され、「活気」が高まることがわかっています。
これにより、うつ症状が軽減し、精神的な疲れを解消することができます。
血圧と脈拍数の減少
都市環境と森林環境における、座観(景色を座って眺める)前後の血圧や脈拍数の変化をみると、
森林環境の方が、血圧と脈拍数が減少することがわかっています。
これにより、ストレス状態が解消・緩和することができます。
副交感神経活動の上昇
都市環境と森林環境における、座観前後の心拍変動をみると、
森林環境の方が、交感神経の活動が低下し、副交感神経が上昇することがわかっています。
これにより、自律神経のバランスが整い、身体がリラックス状態になります。
下記グラフでは、心拍変動性を計測し、変動性が高いほど、交感神経の活動が大きくなることを示しています。
ストレスホルモンの低下
都市環境と森林環境における運動(歩行)前後のストレスホルモンの変化をみると、
森林環境では、運動したにもかかわらず、その数値は一定で、都市環境よりも低いことがわかっています。
代表的なストレスホルモンであるコルチゾールは、副腎皮質という心臓の下にある臓器の一部から分泌されるホルモンで、うつ病患者は、分泌過多となり、コルチゾール値が高いと言われています。
森林浴の最適な頻度・最適な程度 ~森林浴の効果~
森林浴を行う際には、どれぐらいの頻度で、どれぐらいの量をやれば良いのでしょうか?
ここでは、米国バージニア大学のティモシー・ビートリー教授が提唱する「ネイチャーピラミッド」というものを紹介します。
「ネイチャーピラミッド」は、どの程度、自然と接すれば健康的な身体になれるのかについて、わかりやすくまとめたまとめたものです。
このピラミッドでは、日常生活においてはちょっとした気分転換を行い、そして、定期的に非日常を味わい、自然の中で心身ともに休息をとることが必要ということが示されています。
森林浴の具体的な頻度・程度は、次のとおりです。
最下段のデイリーでは、
毎日の生活の中で、屋外環境や近所の公園などで、30分程度、気分転換をしましょう。
二段目のウィークリーでは、
毎週、水辺があるような緑豊かな公園に行き、2時間ほど、リラックスして寛ぎましょう。
三段目のマンスリーでは、
毎月、どこかの週末に、人里離れた自然豊かな環境に出かけ、森林浴して、休息をとりましょう。
最上段のアニュアリー(バイアニュアリー)では、
毎年あるいは隔年、ほとんど人の手が加わっていないような原生林がある大自然におもむき、数日間、壮大な自然のチカラを浴び、畏敬の念を感じましょう。
日頃は、公園でリラックスしつつ、月に1回、年に1回は、しっかり森林浴を行い、心身ともに休息することが必要です。
今週末は、さっそく、自然のチカラを浴びに、森に出かけましょう!
森林浴の「おすすめ場所」 ~森林浴の効果~
森林浴に適した場所は、日本中にたくさん存在しますが、ここでは、林野庁が薦める場所を紹介します。
林野庁では、『日本美しの森 お薦め国有林』という企画で、日本各地の森林620箇所から、オススメとして93箇所を選定しています。
この企画は、3つのキーワード「健康」「観光」「教育」をもとに、森林の魅力を広く知ってもらおうというものです。
今回は、『日本美しの森 お薦め国有林』のうち、厳選された7箇所を紹介します。
『おすすめ場所』
- 北海道代表
「然別自然休養林」(北海道鹿追町然別湖畔)
→ 然別湖・十勝平野・日高山脈を眺められる白雲山 - 東北代表
「焼走り自然観察教育林」(岩手県八幡平市平笠)
→ 全長3km、幅1kmの黒い岩石帯は圧巻の風景 - 関東代表
「野反自然休養林」(群馬県中之条町大字入山)
→ 山や森、草原に囲まれた野反湖は、天空のお花畑とも呼ばれる - 中部代表
「戸隠・大峰自然休養林」(長野県長野市戸隠)
→ 戸隠の山々が鏡のように映り込む鏡池 - 近畿・中国代表
「扇ノ仙森林スポーツ林」(鳥取県八頭町妻鹿野)
→ 希少な野鳥たちが仲良く暮らすブナの森 - 四国代表
「剣山自然休養林」(徳島県三好市東祖谷菅生西島)
→ 山頂から見える朝日や雲海は言葉にならないほど美しい - 九州代表
「田代原風致探勝林」(長崎県雲仙市千々石町庚田代原)
→ 江戸時代から続く原風景が見られる島原半島唯一の放牧地
日常生活で森林と触れあう機会がない方、森林に興味がある方、少しでも、森林浴で癒やされたいと思っていただけたでしょうか?
この記事をご覧になったアナタの、小さなキッカケになったら、筆者としても幸いです。ありがとうございました。
最後に、参考までに、林野庁のガイドブック「いちおしの森&キャンプBOOK~」を紹介します。
人気アニメ『ゆるキャン△』(製作委員会代表幹事:フリュー株式会社)とコラボしたガイドブックです。